今回の活動

私が活動する島根県石見地方で、古くから伝わる伝統芸能の「石見神楽」は日本遺産にも登録されています。今年の大阪万博でも大蛇55匹の大公演がお披露目されました。

その石見神楽でも、秋の例大祭、前夜祭の奉納神楽を昨年から40数年ぶりに舞わせていただいています。演目は神事舞「神迎」と、源頼光たちが酒呑童子を退治する「大江山」。

神迎は今回「ハナドリ」と言われる重要な役を仰せつかったので道(舞の順序や振り付け)を覚えるのに何度も練習しました。またスクワット運動が足にくる還暦前の体には少々キツイ舞でしたが、何とか舞い切りました。

「大江山」では源頼光役で、口上(セリフ)があり、毎日車の中で通勤途中に練習しました。が、本番はお客さんにお酒を継ぎに回ったら逆に飲まされ、しかも夜中1時過ぎ、、口上は何とか言えたものの、酔って足元がふらつきヤジがおこる始末、、まぁこれも前夜祭ならではということで、とりあえず「よう舞うた!」と言ってもらえました。

また当日の親父の晴れ姿を観覧しに、久しぶりに私の妻子全員が遠方から駆け付けました。小学校の「学習発表会」を思い出しました。

石見神楽は、昔から集落の神社(この地域では宮といいます。)にて、稲刈りが終わったころ、神様への感謝と無病息災などを祈願し本祭の前夜祭として、祭典が終わった後、神事舞、日本神話を題材にした舞が夜通し行われています。ですが過疎化による人口減少や多種多様な考え方のもと、後継者が不足し奉納できない神社も出てきました。幸い私の住む集落は小さいながらも、40代の方々が中心となり、その子ども達が3演目も舞うなど昔の賑わいが残っています。私が舞った「大江山」では、鬼が2人退治された後、今年は4番鬼、5番鬼、6番鬼、7番鬼と急遽子どもたちが衣装と鬼面をつけ、神に戦いを挑んでいきました。

この子達のDNAには、こうやって石見神楽が刷り込まれていくのでしょう!

お宮での神楽は、神聖な中にも、集落の方や他の地域から観に来られる方、舞子たちがいて盛り上がる独特な雰囲気があります。「しゃんと舞えよ!」「よう舞うた!」などの掛け声や、「ありゃ誰が舞うとるんなら」「ありゃ〇〇屋の〇〇ちゃんじゃ」「あんたぁ、どこから来んさった?」「よぉ来んさったのぉ」「まぁ飲みんさい」と会話がはずみ、とても心地よい空間に感じます。また夜遅くから明け方まで舞うという非日常的な体験に特別感を覚えます。

昨今は「効率」を重視するあまり、その趣や意味を忘れていく世の中の風潮がありますが、このなんとも言えない昔の祭りの雰囲気を大切にしていきたいと思いました。

また祭りに向け集落の皆で、掃除からしめ縄作り、ノボリの準備をすることで世代を超えたコミュニケーションをはかることができ、四十数年ぶりに参加してみて大事なことなんだと改めて実感しました。

今後の展開

過疎化が進む中山間地こそ、このようなコミュニケーションが大切だと思います。小学校閉校に伴い、世代間や男女間の会話が無くなり、コミュニケーションが取りづらく、人口が減っても「ありゃ誰かいのぉ?」と顔がわからない状態になっています。

今後は神楽はもちろん、空き家を利用した会話の「きっかけづくりの場」や、集落の子供たちが、この地域で育ったことを「誇り」に思えるような活動をしていきたいと思います。

まずはその「きっかけづくりの場」を、地域の方々と年末完成を目指して活動しています。こんな地域に興味のある方がいらっしゃいましたら是非、声をかけてください。